嵯峨景子氏『氷室冴子とその時代』(小鳥遊書房、2019年)を読んでいます。大変読み応えがあるので、少しずつ報告していきたいと思います。
まず本日は1章、2章について。
第1章は「氷室冴子以前―文学と少女漫画の揺籃期」となっています。
この章で心に残ったことは、『ざ・ちぇんじ!』の執筆に「80冊の資料を使った」というコメントが紹介されていることです。古典文学作品、しかも『とりかへばや物語』という一筋縄ではいかない作品をアレンジするという着眼もさることながら、その背景に膨大な知識の蓄積があったことが改めてわかります。
また、折口信夫に傾倒していたという指摘も、『銀の海金の大地』(集英社)の熱烈な愛読者であった私には納得させられるものでした。
彼女の創作が非常に膨大なインプットから生み出されていたこと、それゆえに揺らがぬ屋台骨を持っていたことが明らかになっています。
第2章は「作家デビューから『クララ白書』まで」となっています。
この章で心に残ったことは、『クララ白書』について、「女子校の寄宿舎という設定を用い、氷室は女の子とが女の子でいられる究極の世界を作り上げた。そこは女の子が価値観や美意識を歪めずに生きることができる、解放区でもあった」(79頁)という部分です。
なぜ自分が氷室冴子の作品に熱狂したのか、ということの答えが書かれていたような気がしました。
また、この章には、徹底して音読して自分の文章を確認していたというエピソードも紹介されています。第1章、第2章ともに、嵯峨氏の丹念な資料の掘り起こしと読解により、氷室冴子のストイックな有り様が伝わってきます。
以後も楽しみに読み進めていきたいと思います。
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